いじめについての治療や対処方法をまとめたページです
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当サイト「いじめについて」の内容をPDFファイルでダウンロードしていただくことができます
【配布用 チラシ】
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いじめは広義の依存症 みんなで止めよう! ダウンロード[265KB]
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葛飾区内のいじめ関連の医療相談を受け付けます ダウンロード[394KB]
【参考】
北杜市いじめ問題専門委員会による北杜市立中学校でのいじめ事案に対する報告書です。(クリックするとPDFファイルが開きます)
北杜市いじめ問題専門委員会調査報告書 ダウンロード[ 8MB ]

トラウマは、公衆衛生の問題
公衆衛生とは、疾病を予防し、生命を延長し、身体的、精神的機能の増進をはかる科学であり技術です。広く社会的なレベルで健康の維持と図られます。
身近な例でいえば、風邪や新型コロナウイルスなどの感染症予防のために、幼児のうちから「うがい、手洗い」の予防策を教え、生活習慣として身に着けさせることも、公衆衛生の取り組みです。
子供が生きる上で欠かせない安心や安全が守られていない環境は逆境(adversity)と呼ばれ、トラウマとなりうるいじめや児童虐待などが含まれます。
目の前の支援を必要としている人が、もしかしたらトラウマを有しているかもしれないという視点を常に持ちながら、トラウマに配慮した、トラウマに優しい支援を構築していくことが、トラウマ・インフォームドケア(trauma-informed care:TIC)です。
いじめ問題では、相談機関がたくさん存在しています。警察や学校・教育委員会等も、いじめ問題の相談機関です。
しかし、そのほとんどの機関がトラウマ・インフォームドケア(trauma-informed care:TIC)・エンパワメントについて知らないか、または、TIC・エンパワメントを実行しておりません。TIC・エンパワメントを行わない組織は、いじめ被害者には全く益はありませし、逆にいじめ被害者には害になっています。
TICは.支援現場での再トラウマ化(小児期逆境体験やトラウマを有する人を支援者が再び傷つけてしまうこと)を予防するために生まれてきた概念でもあります実際医療・保健福祉・教育・司法領城のさまざまなサーピス機関で「通常業務」としてなされているさまざまな行為が,結果的に再トラウマを与える行為となってしまっていることが少なくありません(亀岡, 2020)
被害者のトラウマを増やさないために警察や学校・教育委員会等は、トラウマ・インフォームドケアやエンパワメントについて学んで、実行してほしいと考えます。
トラウマ・インフォームドケア
トラウマ・インフォームドアプローチを展開するには、組織的協力が必要です。
6つの原則
1,安全
ケアの提供者だけでなく、ケアを受ける方、その家族にとって安全かどうかが重要です。さらに、「対人関係が安全感をもたらすようにする」ということ事がもっとも重要です
2,信用と信頼に値する透明性
組織の活動と決定は、ケアを受ける方や家族、その他のスタッフとの信頼関係を構築し維持するという目標を掲げ、透明性を持って実施します。
3,ピアサポート
ピアサポーターは「病気を経験した『専門家』」です。ピアサポートは、信頼の醸成、安全の確立、そしてエンパワメントにとってカギとなる「媒介(vehicle)」です。
4,共同と相互性
スタッフと患者、組織に属する直接ケアを提供するスタッフと組織の管理者の力関係が平等であることを重視します。関係性や権限や大きな決定に際して、相互に意味のある共有が生まれることで癒し(healing)が起こります。
5,エンパワメント、声をあげる、そして選択する
組織全体やサービスを受ける患者は、個々の強み(ストレングス)や経験を持つことを認め、それを活かしていきます。これらには、リジリエンスへの信念、個人や組織、コミュニティにはトラウマから回復するための力があるという信念が必要です。
6,文化的、歴史的、そして性差の問題
組織は、積極的に過去の文化的な画一的な見方(ステレオタイプ)やバイアス(人種・民族性・性的志向・年齢・宗教・ジェンダーアイデンティティ・地理性など)を改変していく必要があります。
トラウマ・インフォームドアプローチを実践する10のガイダンス
1,統治・管理とリーダーシップ
組織内に特定の責任者を任命して、業務の指導および監督をします。トラウマ的な体験をしている患者や家族さらにスタッフの声を聴き、参画することを支援します。
2,理念
トラウマ・インフォームドアプローチを明文化し、理念及び手順を設定します。
3,組織の物理的環境
組織は、安全で静かな安心感に満ちた物理的環境を整えます。
4,治療中の回復期の患者、トラウマサバイバー、消費者および家族が従事および関与することについて
患者とスタッフとの間で信頼関係を形成し、「力関係がある」という感覚をなくし、すべての人の発言権や選択権を認めます。
5,部門を超えた協働
組織横断的な協働は、トラウマの理解およびトラウマ・インフォームドケアの原理を共有することで成り立ちます。
6,スクリーニングアセスメント、治療サービス
実践者は、適用可能で最善の実証的根拠および科学の基づいた介入を行います。
7,教育と人材開発および労働環境改善
組織はトラウマやピアサポートに関する継続的な教育と訓練を全スタッフに行います。人事システムとしては、トラウマ・インフォームドケアの原理に基づいて、採用、スーパービジョン、および評価をします。
8,変化を見続けることと質の保証
トラウマ・インフォームドケアの原理と根拠に基づいたトラウマに特化したスクリーニング、評価および治療が行われているかを継続的に評価し、その過程を追い、持続的に見守ります。
9,予算
トラウマ・インフォームドアプローチをサポートするため、スタッフの教育と訓練のための指導者の費用、ピアサポーターの導入費用など、安全な環境を作るための予算が必要です
10,評価
匿名性と秘密を保持して、取り入れたサービス、またはプログラムの導入と効果を評価します。
再トラウマ化を防ぐために回避したいこと
・強制的な対応
・威圧的な態度:腕を組む、挑発的な態度
・大声・命令口調・暴言
・不親切な態度・無関心な姿勢
・支援の内容や、目標を十分に説明しない
・支援方針の突然の変更、約束を破る
・相手に誤解を与えるようなことば遣い
・支援機関の掲示物などのことば:暴力・禁止
持続可能なトラウマインフォームドケアのために必要なこと(亀岡ら, 2018)
1. 日常的にトラウマ曝露とそれに関する症状のスクリーニングをする.
2. トラウマ関連症状に対し効果が実証されたントと対応方法を使用する.
3. 子ども・家族・支援者が利用可能なトラウマケアに関するリソースを作成する.
4. トラウマに影響されて脆弱になっている子どもと家族のレジリエンスや保護要因を強化する.
5. 養育者のトラウマとそれが家族システムに与える影響に対応する.
6. 子どものサーピスシステム全体での持続的なケアと協働を強化する.
7. 二次的トラウマに対応し,支援者へのケア環境を整え,支援者のレジリエンスを高める.
子どものPTSD評価の際の留意点
1. 事前に一般的なトラウマの心理教育を実施する
2. 回避症状に留意する.
3. 子ども本人から聴取する.
4. 症状を具体的に聴取する.
5. 養育者や周囲の大人から情報を収集する.
特に、人為的な災害に介入しようとするとき、支援者は、その対立関係に巻き込まれないで済むわけがありません。
トラウマとなるものが人為的なものである場合には、そこには必ず「加害者と被害者」の対立構造が発生します。被害者に対しては「あなたは悪くない、加害者が第一義的に悪い」ということを何度も強調して、支援者は明確に被害者の立場を支持する必要があります。この時に支援者が中立であることはとても有害です。
エンパワメント
エンパワメントは、人々に夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させることです。
エンパワメントの原則
- 目標を当事者が選択する
- 主導権と決定権を当事者が持つ
- 問題点と解決策を当事者が考える
- 新たな学びと、より力をつける機会として当事者が失敗や成功を分析する
- 行動変容のために内的な強化因子を当事者とサポーターの両者で発見し、それを増強する。
- 問題解決の過程に当事者の参加を促し、個人の責任を高める
- 問題解決の過程を支えるネットワークと資源を充実させる
- 当事者のより良い状態(目標達成やウェルビーイングなど)に対する意欲を高める
エンパワメントの必須条件
大事なのは以下の3つがすべてそろっていることです
- 希望;希望につながるゴールが見えること。
- 信念;自分にはゴールに向かう力があると信じられること。自己効力感や組織効力感(外界の事柄に対し、自分あるいは組織が何らかの働きかけをすることが可能であるという感覚)が持てること
- 意味;ゴールに挑む自分とその努力への意味づけができること。
エンパワメント実現への8要素
エンパワメントを実現するためには、8つの要素(Eight Values for Empowerment)を満たすことが重要です。これらの8つの要素は、効果を測定する評価しようとしても活用できます。
- 共感性 empathy
メンバー間、あるいはメンバーのプログラムへの共感性が欠かせません。自分の意志を持ちながら、他社にも同じように明確な意思があることを認めます。他社の意向を受け止め、自らのことと置き換えて他者の意向と理解することができるかの指標です。
2、自己実現性 self-actualization
メンバーひとりひとりが、自己の活動によって自己の価値観を実現することができると感じるかの指標です。自己実現性が高い活動であれば、人びとは自ら率先して参加します。
3、当事者性 inter sectoral
メンバーひとりひとりが、人ごとではなく、自分のこととしてかかわってるかの指標です。
4、参加性 participation
メンバーひとりひとりが、どの程度活動に影響を与えているかの指標です。
5、平等性 equity
メンバーの連帯を促進するうえで必須です。参加者が、プログラムの内容やフィードバックを平等であると感じているかの指標です。
6、戦略の多様性 multi strategy
多様性は、多様な資源の確保につながる大きな強みです。ワンパターンではなく、さまざまな戦略を複合的に組み合わせてプログラムを遂行しているかの指標です。
7、可塑性 plasticity
可塑性はさまざまな状況変化に柔軟に対応できるかの指標であり、個人や組織の発展に大きな影響を及ぼします。
8、発展性 innovation
将来への発展性や持続可能性は、メンバーに安定感をもたらします。将来を描くことで、現在の自分あるいは自分たちの行動規範を設定し、役割を戦略的に決めることができます。発展へのイノベーションや安定した継続の見通しがあるかを評価指標とします。
エンパワメント技術モデル
エンパワメント技術モデルは、エンパワメントに必要な技術を、段階別と領域別に明示できるよう図式化したものです。対象のフェーズを「段階」として、また手順を踏まえて把握する必要のあるポイントを「領域」として整理しています。これをCASEモデル(Creation, Adaptation, Sustenance, and Expansion) といい世界各国で活用されています
エンパワメントは、つねに発展し変化する状況を踏まえることが大切です。
「創造」「適応」「維持」「発展」の4段階を意識しながら進めることで、当事者の参画を促すより効果的なエンパワメントにつながります。
図.エンパワメントの発展段階(Anme & MaCcall,2008)
参考文献
トラウマ・インフォームドケア、精神看護出版、川野 雅資
トラウマインフォームドケア、日本評論社、野坂 祐子
子どもの未来をひらくエンパワメント科学、日本評論社、安梅 勅江
いのちの輝きに寄り添うエンパワメント科学
―だれもが主人公 新しい共生のかたち―北大路書房、高山 忠雄監修
沖縄戦の心の傷―トラウマ診療の現場から、大月書店、著者;蟻塚亮二
精神科治療学Vol.35No.6Jun.2020、P579-582
トラウマインフォームドケアの意義と広がり
―見逃されがちなトラウマへのケアに向けて―
精神科看護2021.2.Vol.48No.20、P004-012
トラウマインフォームドケアを臨床で展開する
小児の精神と神経60(2): P137-144、2020
小児精神神経科領域とトラウマインフォームドケア
参考ホームページ
エンパワメント科学:新たな実践知の展開に向けて
http://plaza.umin.ac.jp/~empower/anme/research/about_empower/