いじめについての治療や対処方法をまとめたページです
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当サイト「いじめについて」の内容をPDFファイルでダウンロードしていただくことができます
【配布用 チラシ】
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いじめは広義の依存症 みんなで止めよう! ダウンロード[265KB]
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葛飾区内のいじめ関連の医療相談を受け付けます ダウンロード[394KB]
【参考】
北杜市いじめ問題専門委員会による北杜市立中学校でのいじめ事案に対する報告書です。(クリックするとPDFファイルが開きます)
北杜市いじめ問題専門委員会調査報告書 ダウンロード[ 8MB ]

いじめや虐待などの体験が原因になるPTSDは、「複雑性PTSD」と呼ばれます。
たび重なるいじめなどによって気分落ち込んだり、認知が歪んでしまって、さまざまな症状が認められるので、複数の病気の診断を重ねてつけられています。いじめや虐待をうけていた患者さんの症状で多く見られるのは、衝動性、自傷行為、対人関係障害などです。診断名としては、適応障害、うつ病、解離性障害などが上げられます。
これらの表面的な症状を取り上げて診断をしても、その本質は心的外傷(トラウマ)による反応です。ですから、個々の症状を治療していてもよくなりません。その本質にあるトラウマに対して治療が必要であることを意味します。
PTSDが一度のショックにより発症するのに対して、複雑性PTSDは恐ろしい体験が単発ではなく、何度も何度も繰り返して起こることにより発症するものです。この体験とは主に幼少時の虐待、家庭内暴力(DV)、いじめなどです。
成長の過程でこうした体験をした子供は、その後の気分や物事のとらえ方に対して大きな影響を与えます。うまく友達と遊べなくなってしまったり、うまく異性と付き合ったりといった年頃に見合った行動ができなくなります。社会的な孤立から、自分自身や他者に対する考え方にもゆがみが出てきてしまいます。生きる意欲などを失ってしまうこともあります。
衝動的な行動が目立ったり、うつ状態となったり、対人恐怖から外出困難になり、引きこもりになる人もいます。
認知や行動の変化が強くなってしまい、パーソナリティの変化が起こってきます。
いじめによる心的外傷では、受けた後すぐにではなく数年経過してから発症することもあります。
複雑性心的外傷後ストレス障害(complex posttraumatic stress disorder:CPTSD)
いじめ・児童虐待や震災・戦争など「破局的なあるいは過度に持続するストレス」を経験した後にパーソナリティの変化が生じた時に使用される診断名であり、その中核症状は、外傷と関連した世界に対する不信、社会的引きこもり、空虚感、無力感、回避です。
診断基準は以下の通りである。
複雑な心的外傷への暴露の後
- 心的外傷の再体験
- 再体験の入念な回避
- 脅威の持続的な知覚
パーソナリティの変化
- 感情調整の問題;情動反応性の亢進、暴力的な爆発、自己破壊的行動、解離、情動麻痺
- 陰性の自己概念;否定的な信念や予想、持続的で歪んだ認識、持続的な陰性の感情状態
- 対人関係の問題;対人交流を避けたり軽蔑したり関心を示さない。親密な対人関係を維持できない。
いじめによるCPTSD
複雑な心的外傷への暴露
度重なるいじめにより、トラウマが形成されます。巻き込まれた加害者が増えていき、複雑なトラウマが形成されます。
学校側が、いじめを調査しなかったり、いじめを認めなかったり、いじめ隠蔽をすると、いじめ被害者により深いトラウマをつくり出します。いじめによるトラウマではなく、学校側が安全な環境をつくり出さなかったことによるトラウマです。
1心的外傷の再体験
いじめ加害者の行動は予測が難しく、いついじめを再開するかわかりません。いじめ被害者は、安全とは思えない学校で、心的外傷の再体験をします。
2再体験の入念な回避
何度も嫌がらせを受けており、再び心的外傷の再体験ために、いじめ加害者から逃げるようになります。いじめ加害者電話にも出なかったり、訪問しても合わなかったりします。最終的には、不登校などの回避行動をとります。
3脅威の持続的な知覚
いじめがいつ起こるのかと、緊張して日々を過ごすことになります。
パーソナリティの変化
4 感情調整の問題
感情調整が困難になり、苛々することが多くなり、対人トラブルが増えます。周りの人たちに不機嫌と思われることが多くなっていきます。
5 陰性の自己概念
否定的な信念や予想があり、学校生活に明るい未来が見出せなります。その後の人生にも明るい未来が見出せなくなると、自殺企図をするようになります
6 対人関係の問題
対人交流を避け、友達を寄せ付けなくなったり、不登校になったりします。
PTSDのトラウマケアとして、トラウマ・インフォームドケアやエンパワメントなどの方法があります。
児童の複雑性PTSDの対応
特に児童の複雑性PTSDの対応には大きく三つの目的があると考えられています。
- 安全を確保してさらなるトラウマの予防を行う
- 起きてしまったトラウマに引き続き起きた反応に対応する
- 子どもの長期的な成長を支えていく
いじめ問題における複雑性PTSD への対応に際しては,まず子どもの環境の安全の確保(教育環境,地域などの安全)が最優先されます。子どもの基本的な生活リズムはなるべく変えず,遊ぶ時間などを確保することが重要です。
感情的な反応に対しては子どもの感情には共感的態度で接しつつ,現実的な限界設定を行っていきます。PTSD症状の治療に加え,対人関係,感情制御の新たなスキルの獲得や,過去のトラウマとなった出来事の子どもなりの理解を促すあるいは修正し,自己に対する肯定的な認識が持てるように支援していく必要があります。対応の目標は,子どもが自己効力感を高めて,他者との新しい結びつきを創ることにあります。
参考文献
トラウマティックストレス―PTSDおよびトラウマ反応の臨床と研究のすべて、誠信書房、著者;B.A.ヴァン・デア・コルク、A.C.マクファーレン、L.ウェイゼス編、監訳者;西澤 哲
複雑性PTSDの臨床“心的外傷~トラウマ”の診断力と対応力を高めよう、金剛出版、原田誠一編
精神科治療学Vol.35No.6Jun.2020、P573-578
複雑性PTSDのこれまでとこれから